シミ・ソバカス

「シミ・ソバカス」は、見た目に影響を与えることもあり、多くの方が悩むことのある皮膚症状の一つです。原因や特徴は様々なため、それぞれに応じた適切なケアと治療が重要です。この記事では、種々のシミとソバカスの違いや治療法、日常生活での注意点などをお伝えします。

目次

概要

「シミ・ソバカス」と並べて呼ばれることも多くありますが、シミは皮膚に現れる茶色や黒っぽい斑点の総称で、ソバカスはその1種で医学的に雀卵斑と呼ばれるものを指すことが一般的です。シミには、ソバカス(雀卵斑)以外にも日光黒子(老人性色素斑)肝斑炎症後色素沈着など様々な種類があります。それぞれのシミで見た目が似ることもありますが、原因は異なり、治療も様々です。
シミは基本的には見た目の問題で命に関わるようなことは通常ありませんが、まれに初期の皮膚がんがシミとして現れることがあります。そのため、特に形が歪だったり色ムラがあったりするシミができた場合や、シミが数ヶ月程度で急に大きくなったという場合には、確認のために一度皮膚科を受診されることをお勧めします。

シミの種類と症状・原因・治療

ソバカス(雀卵斑)

典型的には、数mmほどの褐色の斑点が鼻の頭から両頬にかけて左右対称に広がります。子供の頃からあり、特に思春期頃に目立つようになることが多いのも特徴です。
原因は、遺伝による体質的な要因が大きいと考えられています。また、紫外線や擦るような刺激(皮膚の摩擦)は色が濃くなる原因になります。
雀卵斑の治療は保険適応外ですが、ピコレーザー、Qスイッチ付レーザーなどのレーザー治療や光治療が行われることが多いです。ベルデクリニックでは、ジェントルマックスプロ®によるロングパルスアレキサンドライトレーザーを用いた治療を行っています。

日光黒子(老人性色素斑)

名前のように顔や手の甲、前腕など日光が当たるところにできることが多い褐色の斑点です。通常、輪郭ははっきりしていて、大きさは数ミリから数センチメートルと様々で、顔の左右で別々の出方をすることも多いです。別名から連想されるように、高齢になるとほとんどの方にできます。一方で、できはじめるのは中年世代のことが多いです(早い方では20代でできることもあります)。放置していると徐々に盛り上がって、脂漏性角化症というできものになることがあります。
原因は、紫外線の刺激と加齢による変化と考えられています。また、擦るような刺激(皮膚の摩擦)は色が濃くなる原因になります。
日光黒子の治療は雀卵斑と同様で、保険適応外ですがピコレーザー、Qスイッチ付レーザーなどのレーザー治療や光治療が行われることが多いです。ベルデクリニックでは、ジェントルマックスプロ®によるロングパルスアレキサンドライトレーザーを用いた治療を行っています。レーザー・光治療以外では、ハイドロキノン、トレチノインやビタミンC、トラネキサム酸などの塗り薬・飲み薬による治療もあります(こちらは完全に消すというよりも、薄くするための治療です)。

肝斑

典型的には、頬骨のあたりを中心に顔の左右対称に同じように広がる淡い褐色の斑点です。ぼんやりとして、輪郭がはっきりしない部分があるのが一般的です。額や口の周りにできることもありますが、目の周り(まぶた)にできることは基本的にはありません。30-40歳代にできて、60歳代以降では薄くなってくることが多いです。
原因ははっきり分かっていませんが、他のシミ以上に紫外線や擦るような刺激(皮膚の摩擦)によって敏感に色が濃くなりやすい傾向があります。例えば、他のシミで行われるようなレーザー治療も、逆に悪化の原因となりえます(弱い出力でのレーザー照射は行われることもありますが、他の治療を組み合わせるなどして慎重に行うべきです)。妊娠・出産を契機に目立ってきたり、色調が濃くなってきたりすることもあり、ホルモンバランスの影響も考えられています。
ベルデクリニックでは、積極的な治療としては、ハイドロキノン、トレチノイン塗り薬治療をお勧めします(この2剤にステロイドを加えた治療がより有効という報告もあるのですが、酒さ様皮膚炎やニキビ等の合併症リスクから当院では基本的にシミ治療でステロイドは使用しません)。よりマイルドな治療として、ビタミンC、トラネキサム酸飲み薬による治療もあります。肝斑の治療も保険の適応はありません。

炎症後色素沈着

名前の通り皮膚に炎症が起きた後にできる褐色の斑点です。炎症のあった(強かった)範囲に一致して、基本的には境界のはっきりした様々な大きさのシミとなります。
原因となる炎症しては、アトピー性皮膚炎などによる湿疹、赤ニキビ、ケガやヤケド、レーザーによる刺激などがあります。紫外線や擦るような刺激(皮膚の摩擦)は色が濃くなる原因になります。
治療ですが、まずは原因となる炎症の治療が第一です。色素沈着自体に関しては、原因によってはビタミンCの内服治療を保険適応で行うことができます。ただし、速効性のある治療ではなく、積極的な治療を希望される場合は、自由診療になりますがハイドロキノン、トレチノイン塗り薬治療をご提案します。トラネキサム酸の飲み薬治療もございます。なお、紫外線などの刺激がなければ、数ヶ月程度で自然と消えることも期待できます。

その他のシミ

ここまでに挙げたもの以外にも様々なシミがあります。


最も気を付けたいものは、悪性黒色腫(メラノーマ)です。いわゆるホクロのがんで、頻度は決して多くありませんが、進行して体の他の場所に転移すると治療が難しくなるため、なるべく初期に見つけることが大切です。特に形が歪だったり色ムラがあったりするシミ、数ヶ月程度で急に大きくなるシミの場合には、確認のために一度皮膚科を受診されることをお勧めします。

次に、ホクロ(色素性母斑)です。少し盛り上がっていることが多いですが、ほぼ平坦なこともあります。皮膚がんと区別がつきにくい場合には、手術で切除します。美容的に気になる場合には、自由診療になりますが、炭酸ガスレーザーで削り取るような治療が行われることもあります。

扁平母斑(カフェオレ斑)は、名前通りカフェオレのような色調の褐色の斑点で、生まれた時からあることが一般的です。治療は、Qスイッチルビーレーザーというレーザーが保険適応となっていますが、照射の回数制限や再発、そもそも効果の乏しいタイプがある、という問題があります。なお、類似のもので思春期頃にできるベッカー母斑という褐色の斑点もあります。斑点の中に多毛を伴うことがあり、気になる場合には保険適応はありませんが医療脱毛が治療選択肢となります(斑点が一時的に濃くなるリスクもあるため、テスト照射を行うなどして慎重に行うべきです)。

太田母斑は、片側の目の周りから額や頬にかけての青っぽい色調の斑点で、生まれた時からあることが多いのですが、思春期頃に濃くなる傾向があります。治療は、Qスイッチレーザーやピコレーザーというレーザーが保険適応となっています。

遅発性太田母斑(後天性真皮メラノーシス)は、典型的には両頬左右対称に数mmほどの細かい灰~青みがかった斑点として見られます。20歳代~40歳代の女性に多く、よくできる部位も含めて肝斑との判断が難しいことがあります。治療には、太田母斑同様、Qスイッチレーザーやピコレーザーというレーザーが用いられます。

診断・検査

シミは、特徴的な見た目や経過から診断します。
小さかったり薄かったりして肉眼では分かりにくい場合や、皮膚がんなど他のできものと見分けがつきにくい場合には、ダーモスコピーという拡大鏡を用いたり、皮膚生検と言ってできものの一部または全体を切り取って顕微鏡で確認する検査を行うことがあります。

日常生活上の注意点

シミには様々な種類がありますが、メラニン色素が増えることで色調が濃くなることは共通しています。そのため、シミを濃くしないためには、メラニン色素を増やすような刺激、すなわち紫外線の刺激や擦るような刺激(皮膚の摩擦)をなるべく避けることが大切です。具体的には、帽子や日焼け止めの使用など紫外線ケアを行うことと、皮膚を擦る顔・体の洗い方や拭き方を避けること、皮膚を擦るようなクセがあればそれを改めることです。
また、形が歪だったり色ムラがあったりするシミ、数ヶ月程度で急に大きくなるシミは、万が一にも皮膚がんの可能性がないか確認のために一度皮膚科を受診されることをお勧めします。

気になるシミがある、シミの治療ができないか相談したいという場合には、ぜひご相談ください。

VERDE CLINIC お茶の水(ベルデクリニック オチャノミズ) 皮膚科 加藤卓浩

参考

日本美容外科学会: 美容医療診療指針(令和3年度改訂版), 日美外報. 2022; 44: 86-98.

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