ニキビは、思春期から成人期にかけて多くの人が経験する皮膚のトラブルです。見た目の悩みだけでなく、適切なケアをしないとニキビ痕が残ることもあります。しかし、現在では有効な治療法が確立されつつあり、症状を軽減してニキビ痕が残るリスクを下げることが可能です。ここでは、ニキビの基本情報から治療法、日常生活での注意点などについてご紹介します。
ベルデクリニックお茶の水では、ニキビ痕をなるべく作らせないための専門的な治療を行っています。しっかり治療するためには数ヶ月から数年単位での時間が必要ですが、オンライン診療も可能であり、御茶ノ水駅から徒歩3分というアクセスの良さで忙しい方にも通いやすい環境です。ぜひ一度ご相談ください。
概要
ニキビは、毛穴に皮脂や古い角質が詰まることで、皮膚(毛穴)に炎症が起こる病気です。医学的には「ざ瘡」という皮膚の病気で、特によく見られる一般的なものは「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」、膿が溜まったものは「膿疱性ざ瘡(のうほうせいざそう)」という病名で呼ばれます。ここでは、一般の方が読みやすいように「ニキビ」で呼び方を統一します。
症状
一口にニキビと言っても、その症状はさまざまです。毛穴が詰まって皮脂が溜まった状態である白ニキビ、溜まった皮脂が酸化して黒く見えるようになった黒ニキビ、炎症を起こして赤く腫れた赤ニキビ、さらに悪化して膿が溜まった状態の黄ニキビなどです。治った後は赤く盛り上がったり、逆にクレーター状にくぼんだりしたニキビ痕が残ることもあります。もちろん、このような様々な状態のニキビとその痕が混ざっていることもあります。特に顔で皮脂の多い額や頬、下あごなどに目立つことが多く、顔以外に胸や背中に出ることもあります。
原因
ニキビの最初のステップは、①毛穴の出口に皮脂や古い角質が詰まることと考えられます。毛穴には皮脂を分泌する皮脂腺があり、毛穴の出口が詰まると、②行き場を失った皮脂が毛穴の中で過剰に溜まることになります。毛穴には皮脂を好むアクネ菌という菌が普段からいるのですが、毛穴の中に皮脂が溜まると、③アクネ菌がそこで過剰に増殖します。アクネ菌が過剰に増殖することで、④炎症が起きます。炎症が起こることで、⑤皮脂が過剰に分泌されたり、角質が厚くなったりして、さらに毛穴を詰まらせます。こうして、ニキビが悪化していくことが考えられています。
ちなみに、特に夏に悪化する胸や背中のニキビでは、アクネ菌と同じく毛穴に普段からいて皮脂を好むマラセチア菌が関わっていることもあります(マラセチア毛包炎)。
ニキビは、皮脂が増える10代の思春期に目立つようになることが多いのですが、20代以降の成人や、中高年にも発生することがあります。これは、生活習慣の乱れやストレス、ホルモンバランス、スキンケアの方法など、さまざまな要因が複雑に絡み合って発生すると考えられています。
診断
ニキビは通常、その特徴的な経過と見た目から診断されます。また、症状の程度や分布から、重症度が判断されます。まれに、他の皮膚疾患との区別が必要な場合は、皮膚の一部を採取して検査を行うこともあります。
治療
ニキビの治療は、症状や重症度、そして原因によって異なります。自己判断で治療を行うのではなく、皮膚科を受診し、適切な治療を受けることをお勧めします。最新の研究では、以前からある抗生剤治療に加えて、毛穴の詰まりを改善・予防する保険治療の塗り薬やケミカルピーリング、漢方薬、光治療にレーザー治療など、種々の治療の有用性が科学的に判断されるようになってきています。
Verde Clinic お茶の水では、ニキビの原因や症状に合わせたさまざまな治療法をご提案しています。ニキビ治療において重要なのは、一人ひとりの肌の状態、生活習慣、そしてニキビを悪化させる要因を意識して、それらに合った治療プランを一緒に作っていくことだと考えています。そのため、事前問診や診察の際に日常生活についてお伺いすることもありますが、ご了承ください。
ニキビの発症・悪化には、皮脂の過剰分泌、毛穴の詰まり、アクネ菌の増殖など、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。状況に合わせた適切な治療法を選択することが、一日でも早くニキビのないお肌を取り戻すための近道となるのです。
当院皮膚科では、無理に自費診療をお勧めすることはなく、むしろ基本的には保険診療の範囲の治療を中心に行っております。
治療の中心となるのは、毛穴の詰まりを改善・予防する塗り薬です。毛穴の詰まりの治療は、以前は自費診療のケミカルピーリングが中心でしたが、近年では保険でピーリング作用のある薬が使えるようになっています。このようなお薬は、使い方次第で効果が出にくかったり副作用がひどく出てしまったりすることがあり、適切に使うことが大切です。他のお薬では、ピロリ菌を減らす抗生剤も重要です。近年では抗生剤のやみくもな使用による耐性菌化も問題となっており、必要なタイミングで必要な期間使用することが大切です。その他、日常生活におけるアドバイスや、漢方薬やビタミン剤などの投薬、面皰圧出処置なども保険治療として行うことがあります。
自費診療として、毛穴のピロリ菌や皮脂腺(皮脂を分泌するところ)にエネルギーを加えることでニキビへの、また皮膚の深い部分のコラーゲン生成を促すことでニキビ痕への効果が期待されるレーザー医療機器や、毛穴の洗浄・ピーリングを行うウォーターピーリング機器などもご用意しておりますので、ご興味のある方はお気軽にご相談ください。また、今後ケミカルピーリングやドクターズコスメ、ビタミンA誘導体の内服治療、ニキビ痕に対する瘢痕治療などの導入も検討しております。
しかし、いずれの治療も魔法ではありませんので、治療の効果を高め、再発を防ぐためには、患者さん自身のライフスタイルの見直しも重要になってきます。当院では、医師による丁寧な診察を通じて、患者さん一人ひとりの生活習慣についてのアドバイスも行っています。
ニキビは、適切な治療と生活習慣の改善を組み合わせることで、改善が期待できます。一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
日常生活での注意点
治療後は、医師の指示に従って、処方された薬を正しく使用してください。自己判断で薬の使用を中止したり、使用量を変えたりすることは避けましょう。
- 治療部位は清潔に保ち、刺激を与えないように優しく洗いましょう。ゴシゴシこすったり、熱いお湯で洗顔したりすることは、お肌への負担が大きいため、避けましょう。
- 保湿をしっかり行い、お肌の乾燥を防ぎましょう。乾燥は、バリア機能の低下や炎症の悪化に繋がります。
- 紫外線対策として、日焼け止めを塗布したり、帽子や日傘を使用しましょう。紫外線を浴びることで、ニキビが悪化しやすく、色素沈着も起こしやすくなってしまいます。
ニキビは、毛穴を中心に炎症が起こるありふれた皮膚の病気ですが、患者に重い心理的負担や、治療困難なニキビ痕を残す可能性があります。適切なスキンケアと治療法を選択することが重要であす。
よくある質問
皮膚科によく寄せられるニキビに関する質問をまとめました。
Q1.ニキビは自然に治りますか?
ニキビは、自然に治る場合もありますが、炎症が悪化したり、ニキビ痕が残ったりする可能性があります。
赤ニキビを放置しておくと、炎症が周囲の組織に広がり、皮膚の深い部分である真皮層にダメージが及ぶことがあります。すると、肌の表面がデコボコとしたニキビ痕や、赤みや茶色い色素沈着として残ってしまうリスクが高まります。
早期に治療を開始することで、ニキビを早期に改善し、ニキビ痕のリスクを減らすことにつながります。自己判断せず、まずは皮膚科にご相談ください。
Q2.ニキビができやすい場所ってありますか?
ニキビは顔だけでなく、背中や胸、頭皮などにもできます。
顔の中でも、皮脂腺が多く皮脂分泌が盛んなTゾーンと呼ばれる「おでこ」「鼻」「あご」は、ニキビができやすい場所です。特に思春期ニキビは、このTゾーンに集中してみられることが多いです。
一方、大人ニキビは、フェイスラインやUゾーンと呼ばれる「あご」「口周り」にできやすい傾向があります。これは、ストレスやホルモンバランスの乱れ、不規則な生活習慣などが影響し、肌のバリア機能が低下することで、これらの部分に炎症が生じやすくなるためと考えられます。
また、髪の毛の生え際やマスクで擦れる部分は、摩擦や刺激によってニキビができやすくなります。ニキビができる場所は、年齢や性別、生活習慣、体質などによっても異なるため、一度皮膚科にご相談されることをお勧めします。
Q3.市販薬でニキビ治療はできますか?
市販薬でもニキビの症状が緩和する可能性はあります。
市販薬には、殺菌作用のある「イソプロピルメチルフェノール」や「サリチル酸」や、抗炎症作用のある「イブプロフェン」が配合された塗り薬など、さまざまな種類があります。
しかしながら、アクネ菌に対する市販薬の殺菌作用は限定的であると考えられ、特に毛穴の深い部分や膿が溜まった部分には十分な効果は期待しにくいように考えられます(処方薬であっても、抗生剤の塗り薬だけでは十分な効果が得られないことは珍しくありません)。
また、近年のニキビ治療で重要な毛穴の詰まりの改善・予防に関しては、2024年11月現在、有効な市販薬がありません。
さらに、ニキビの原因や症状は人それぞれ異なります。
ですので、ニキビを気にされて治療を考える状況であれば、自己判断で市販薬を使用するのではなく、皮膚科に相談されることを強くお勧めします。もちろん、市販薬で効果が得られない場合や、ニキビ痕が気になる場合も、自己流でケアを続けるのではなく、医療機関を受診しましょう。時々、市販薬を使った後に受診すると怒られるから受診したくないと聞くこともありますが、市販薬を使っていただけで怒る皮膚科医はあまりいないと思います。少なくとも、VERDE CLINIC お茶の水にはおりませんので、安心して受診して下さい。
Q4.どうしてニキビ痕は残るのですか?
ニキビ痕は、炎症が起きた皮膚が再生する過程で、痕が残ったものです。
ニキビの炎症がひどいほど、そして炎症が長引くほど、痕が残る可能性が高くなります。ニキビ痕は、『赤み』『色素沈着』『クレーター状の凹み(萎縮性瘢痕)』『肥厚性瘢痕』『ケロイド』など、いくつかのタイプに分類できます。
- 赤み:炎症が起こるとその部分の血管が拡張して血流が良くなり、皮膚の浅い部分では赤みとなります。通常、炎症が落ち着くと血管拡張は改善しますが、炎症が強い場合や長く続いた場合に血管の拡張とそれによる赤みが残ることがあります。治療としては、レーザー治療が一般的ですが、保険外の自由診療になります。
- 色素沈着:炎症によって黒い色素であるメラニンが過剰に生成され、皮膚に沈着した状態です。紫外線対策を行うことで、通常は数ヶ月の経過で消えていきます。なるべく早い改善を目指す場合、ビタミンC等の内服やケミカルピーリング等の手段がありますが、保険外の自由診療となることが多いです。
- クレーター(萎縮性瘢痕):炎症が皮膚の深い層まで達することで異常なコラーゲンが作られ、そにれよって皮膚が引きつれて、肌に凹みができてしまった状態です。治療としては、マイクロニードリングやフラクショナルレーザー、ケミカルピーリングなどが行われることがありますが、これらの治療は保険外の自由診療になります。
- 肥厚性瘢痕:炎症が治る過程で、皮膚の深い層でコラーゲンが過剰に生成され、皮膚が盛り上がってしまった状態です。治療としては、ステロイドの外用/テープ/局所注射、圧迫治療、トラニラストという飲み薬、手術、充填剤(フィラー)注射などが行われます。治療によっては、保険外の自由診療となります。
- ケロイド:肥厚性瘢痕と同様に皮膚の深い層でコラーゲンが過剰に生成されますが、それが広範囲に拡大し、元のニキビの範囲を大きく超えて赤く盛り上がってしまった状態です。体質が関係していることが多く、かゆみや痛みを伴いやすいです。治療は肥厚性瘢痕に似ていますが、注射などの刺激でも悪化しやすいことや手術では放射線(電子線)治療と組み合わせが必要とされることなど、より治療が難しくなります。
ニキビ痕は、一度できてしまうと、自然に消えることは難しく、治療にも時間や費用がかかります。そのため、ニキビ痕を残さないためには、ニキビができ始めたら早めに治療を開始することが大切です。
Q5.食生活で気を付けることはありますか?
ニキビと特定の食物との関係は明らかではないとされています。つまり、ニキビの患者さん全員に勧められる特定の食品の制限はありません。もちろん、極端に脂質の多い食生活を行うことで皮脂が多くなり、それによってニキビが悪化する可能性などはあるので、バランスの取れた適量な食事を心がけることは大切です。なお、バランスよく食べられていれば極端に不足することは通常ありませんが、皮膚の代謝にビタミンAやビタミンB群、ビタミンC、亜鉛などが関わっていることが分かっています。
- ビタミンA:皮膚・毛穴の角化や皮脂の分泌に関わっています。ニキビの薬に、ビタミンAに類似した物質があるくらいですが、過剰摂取による副反応が知られており、特に妊婦さんでは奇形の原因となるため摂りすぎは厳禁です。といっても、通常の食事のみで過剰摂取になることはそうありませんので、サプリメントや薬を使用する場合以外は過度に気にしなくても大丈夫です(うなぎやレバーを日常的に食べるような方は気をつけてください)。人参やホウレンソウ、卵黄、バター、レバーなどに多く含まれています。
- ビタミンB群:様々な種類がありそれぞれで働きは異なりますが、皮膚の新陳代謝を促し、健康な状態に保つ働きを担うものがあります。豚肉、レバー、大豆製品、玄米などに多く含まれています。
- ビタミンC:コラーゲンの生成を助け、皮膚のハリや弾力を保つ働きなどがあります。また、抗酸化作用があり、ニキビの原因となる活性酸素を除去する効果も期待されます。柑橘類、ブロッコリー、キウイフルーツ、ジャガイモなどに多く含まれています。
- 亜鉛:皮膚の再生、傷の治りに関わっています。また、皮脂の分泌を抑制する効果が期待されます。牡蠣、牛肉、アーモンド、チーズなどに多く含まれています。
逆に、脂肪分や糖分の多い食事は、皮脂の分泌を促進する可能性があるので注意が必要です。
- 脂っこい食事:揚げ物や脂身の多い肉などの摂りすぎは、皮脂の分泌を促進し、ニキビを悪化させる可能性があります。
- 甘いもの:糖分を多く含むお菓子やジュースなどの摂りすぎは、皮脂の分泌を促進するだけでなく、肌の炎症を悪化させる可能性があります。
ニキビと特定の食物との関係は明らかではないとされますが、食生活の乱れはニキビにも身体にもいいことではありません。バランスの取れた食事を心がけましょう。
Q6.何歳くらいからニキビ治療はできますか?
ニキビ治療は年齢に関係なく受けることができます。Verde Clinic お茶の水では、小児ニキビから大人ニキビまで、幅広い年齢層の患者さんのお悩みにお応えします。
ニキビは、思春期に出てくることが多いですが、大人になってからもニキビに悩む方は少なくありません。
年齢や症状によって原因が異なることがありますし、お薬によってはお子様や妊娠中、授乳中の方に使えないものもあります。治療効果を上げ、不要な副反応を減らすためには、状況に応じた適切な治療法を選択することが重要です。
Q7.治療にかかる費用はどれくらいですか?
ニキビ治療の費用は、治療内容によって異なります。保険診療で3割負担の方では、初診か再診か、オンライン診療科否か、処置があるか否か、薬がどの程度必要かなどで変わりますが、1回あたり1000-3000円弱となることが多いです。自由診療の場合は治療内容によってかなり幅がありますが、保険が効かず全額自己負担となるため、より高額になることが一般的です。
Q8.治療中の注意点はありますか?
受診時には、肌の状態をしっかり確認するためにメイクを落としていただく場合があります。
また、一般的なニキビ治療における注意点としては、以下の点が挙げられます。
- 日焼けは避けるようにしてください。
- 前日に施術部位の毛を剃らないようにしてください。
- 当日は、施術部位に化粧水や乳液などは塗らないようにしてください。
- 飲酒や激しい運動は控えるようにしてください。
施術後の注意点としては、以下の点が挙げられます。
- 刺激を与えないようにしましょう(洗顔は泡で優しく洗うようにし、不必要に肌を触ったり、特に擦るような行為は避けましょう)。
- 紫外線対策をしっかり行いましょう。
- 保湿を十分に行いましょう。
- 肌を清潔に保ちましょう。(1日2回の洗顔をお勧めしております)
- お薬の使い方に関しては、当院、薬局の指示に従うようにしてください(もし矛盾するような指示があった場合にはご連絡下さい)。
Verde Clinic お茶の水では、患者さん一人ひとりの症状に合わせて、最適なニキビ治療をご提案させていただきます。お気軽にご相談ください。
参考文献
山崎 研志ほか: 尋常性痤瘡・酒皶ガイドライン 2023, 日本皮膚科学会雑誌. 2023; 133(3): 407-450.
Fox L, et al. Treatment Modalities for Acne. Molecules. 2016 Aug 13;21(8):1063.