「自分は汗の量が多い気がする…」と感じたことはありませんか?そのような場合は、多汗症の可能性があります。多汗症に悩む方は少なくありません。日常生活での汗の量が気になる場合は、皮膚トラブルや臭いの原因になることもあります。特に、脇汗(ワキ汗)・手汗に悩まれる方で一定の基準を満たす場合には、近年保険適用の有効なお薬が増えてきましたので、一度皮膚科で相談されることをお勧めします。(ワキ汗・手汗以外でも保険適用となる場合はありますが、2024年現在、治療の手段は比較的限られているのが実情です)
多汗症の概要
多汗症は、通常ではあまり汗をかかない状況や比較的軽い刺激(暑さや緊張など)で過剰に汗をかいてしまう病気です。そのため、日常生活の中で気になる場面が出ることがあります。例えば、書類を渡す際に手汗で紙が濡れてしまったり、少し緊張しただけでワキ汗が出たりすることがあります。
多汗症は「原発性多汗症」と「続発性多汗症」の2種類に大きく分けられます。甲状腺機能の異常や糖尿病、薬の副作用など、比較的はっきりした原因に続いて発症する「続発性多汗症」では、原因の確認が重要です。一方、原因となる病気などが見つからない「原発性多汗症」では、根本的な治療は困難なものの、症状を抑える治療によって日常生活での支障を減らす/なくすことができます。なお、多汗症は、全身に汗が増加する「全身性多汗症」と体の一部のみに汗が増える「局所多汗症」にも分けることができます。
多汗症は、日常生活に支障をきたすだけでなく、精神的なストレスや対人関係の悩みにもつながることがあります。 一人で抱え込まず、お気軽にご相談ください。
多汗症の治療
多汗症の治療は、まずその原因となるような病気などがないか確認することが大切です。
原因のある続発性多汗症の場合は、その原因を取り除くことが治療の基本となります。例えば、薬の副作用であればその薬をやめる(別の薬に変える)、甲状腺ホルモンというホルモンが異常に出てしまう病気であれば薬(抗甲状腺薬)でそのホルモンを作られにくくする、感染症の場合には抗生剤を使うなどです。
原因の見つからない原発性多汗症の場合は、過剰に汗をかいてしまう部位によって治療が変わります。
全身の汗が多い全身性多汗症の場合には、主に抗コリン薬というタイプの飲み薬を検討します。汗は、皮膚の汗腺という組織で作られますが、この汗を作る機能は神経によって調節されています。そして、神経から汗腺に汗を作るよう指示を届けるのがアセチルコリンという物質なのですが、抗コリン薬にはこのアセチルコリンを邪魔する作用があります。そのため、神経が汗を作る指示を汗腺に伝えられなくなり、汗が作られなくなるというわけです。注意点として、薬の効き方に個人差が大きいことがあります。また、アセチルコリンは、汗以外にも様々な身体の働きに関わっているため、副作用の可能性にも注意が必要です。
この抗コリン薬ですが、近年塗り薬も開発されています。飲み薬に比べて塗った場所でしっかり働きやすく、逆に塗った場所以外に作用する可能性は大きく下がるため、体の一部のみで汗が増える「局所多汗症」に有用な薬となっています。ただし、きちんと効果や副作用について検証されている部位が薬によって限られていて、保険適用で使える部位が決まっています。具体的には、2024年11月時点では、ワキ汗が多い「原発性腋窩多汗症」、手のひらの汗が多い「原発性手掌多汗症」に対しての薬があります。また、副作用の可能性が全くないわけではなく、誤った使い方をすることでそのリスクが上がってしまうため、適切な用法用量を理解して使う必要があります。
抗コリン薬以外の治療法としては、汗腺をつまらせることで汗を抑える塩化アルミニウムの塗り薬や、イオントフォレーシス療法、抗コリン薬と同様にアセチルコリンを抑えるボツリヌス・トキシン(ボトックス)注射、汗腺よりもずっと手前で神経を切ってしまう交感神経遮断術という手術などの治療法があります。起こりうる副作用の違い、使える部位の違い、保険適用の有無・行える施設の違いなど、それぞれに特徴があります。
VERDE CLINIC お茶の水では、保険診療として主に原発性腋窩多汗症と原発性手掌多汗症の治療を行っています。日常生活で過度のワキ汗、手汗に悩んでいる方は一度ご相談ください。診断には病歴と症状の確認が重要で、事前問診にちゃんと回答していただければオンライン診療の対応も可能です。(オンライン診療にはデジスマアプリのインストールが必要です。また、続発性多汗症の可能性を考えるべき基礎疾患がある場合などは、対面診療が必要となります。)
例えば、手汗がひどくて書類が濡れてしまう方や、ワキ汗が気になって集中できない方などは保険適用となる可能性が高くなります。若い患者さんも多く、生活や精神面に影響を及ぼすことがあります。
多汗症は、適切な治療を受けることで症状を改善できる可能性があります。一人で悩まず、まずは皮膚科にてお気軽に相談してみましょう。
効果
多汗症の治療は、単に汗を減らすだけでなく、患者さんの生活の質を向上させる重要な役割を果たします。日常生活での不便や精神的な負担を軽減することで、自信を取り戻すことができます。
例えば、学校生活やビジネスシーンで手汗を気にせず書類を扱えるようになる、ワキ汗が抑えられることで、衣類の汗染みを気にせず明るい服を着られるようになり、おしゃれを楽しむことができるようになる、腕を挙げる動作も気にならなくなる、など。こうした心理的な負担の軽減は、日常生活全般にポジティブな影響をもたらします。
治療の効果の持続期間
治療法によって効果の現れ方や持続期間には個人差があります。例えば、塩化アルミニウムを用いた治療は効果が出るまでに数週間かかる場合がありますが、抗コリン薬やボツリヌス・トキシン注射は数日以内に効果を実感できることが多いです。塗り薬は基本的には1日1回の使用ですが、症状の程度や時期によって、使用頻度を減らせる場合もあります。ボツリヌス・トキシン注射は数ヶ月、手術はより長期的な効果が得られることが一般的です。
施術の流れ
VERDE CLINIC お茶の水では、患者さんに安心して治療を受けていただけるよう、丁寧な問診と診察を心がけています。多汗症治療の流れは以下のとおりです。
- 予約
保険診療では、デジスマというサービスで予約を承っております。スマートフォンにデジスマアプリをインストールされている方ではアプリからの予約がスムーズです。アプリをインストールされていない方でも、当院ホームページや公式LINEからデジスマ予約いただくことが可能です。 - 問診
予約後に、Web事前問診票のURLをお知らせしておりますので、来院までにご回答をお願いします。「一番気になる症状」という項目がございますので、ここで「多汗症」を選択いただきます。その後、案内に従ってご回答ください。 - 来院・受付
予約日時になりましたらご来院ください。受付にて保険証(マイナカード)を認証いたします。受付が完了しましたら、診察室よりお呼びいたします(基本的に、同じ予約枠の方では来院の順にお呼びいたします)。
オンライン診療の場合には、予約時間の前にアプリよりチェックインして下さい。予約時間になりましたら、デジスマアプリでビデオ通話の呼び出しをさせていただきます。
(対面診療、オンライン診療とも、状況により多少時間が前後する可能性がございます) - 診察
問診票の内容にもとづいて、診察いたします。原発性局所多汗症では問診と汗が多い部分の確認で診断させていただくことが多いのですが、原因となりうる病気等がある場合には検査が必要になる可能性もあります。
診察結果にもとづいて、患者さんの状況に応じた治療法と治療計画をご提案します。治療内容や予想される効果、起こりうるリスク、治療期間などについてお伝えして、治療の選択をサポートいたします。 - 会計、処方箋・診療明細等お渡し、次回予約
対面診療の場合には、診察後は受付に戻っていただき、そちらで会計と処方箋・診療明細等のお渡しを行います。
また、次回の予約もお願いいたします。(もちろん、後日患者様ご自身で予約いただいても大丈夫です) - 処方薬受け取り
患者さんのご都合のよい薬局に処方箋をお持ちいただき、処方薬を受け取っていただきます。
多汗症に関するよくある質問
多汗症に関して、よく寄せられる質問をまとめました。
Q1.手術以外で効果のある治療法はありますか?
個人差はありますが、通常手術以外にも有効な治療法があります。特に手術が選択肢となりうる原発性手掌多汗症では、近年抗コリン薬の塗り薬が最も一般的な治療法となっています。他に、行っている施設は限られますが、イオントフォレーシス療法も原発性手掌多汗症に対して有効性が期待できます。
Q2.治療費はどのくらいかかりますか?
一般的な塗り薬の治療の場合、初診時、再診時の一般的な診察料は、3割負担で。別途薬代が、3割負担で(2週間分)。また、オンライン診療の場合には、保険適用外のシステム利用料が
Q3.治療に副作用はありますか?
副作用は治療法によって異なります。例えば、抗コリン薬、塩化アルミニウムなどの塗り薬では、皮膚の赤みや痒みなどのかぶれ症状が出ることがあります。抗コリン薬では。気になる症状が出た場合には、なるべく早くご連絡ください。
VERDE CLINIC お茶の水では、多汗症に対する専門的な治療を提供しており、オンライン診療も可能です。御茶ノ水駅から徒歩3分というアクセスの良さで、忙しい方でも通いやすい環境です。お悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
参考文献
藤本 智子ほか: 原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023年改訂版(2023年12月一部改訂), 日本皮膚科学会雑誌. 2023; 133(13): 3025-3056.