フケ症・脂漏性皮膚炎

脂漏性皮膚炎は、頭や顔など皮脂が多い部位が炎症を起こして赤くなる病気です。長く続いたり、再発を繰り返したりしやすく、患者さんの負担になります。赤みのほかに、かゆみや頭では「フケ」の増加が見られることが多く、フケ症と呼ばれることもあります(なお、フケ症は単にフケが多い状態という意味で使われることも多く、シャンプーや髪染めによるかぶれなど、脂漏性皮膚炎以外の場合もあります)。本記事では、脂漏性皮膚炎の特徴や原因、治療法、日常生活での注意点について解説します。

目次

概要

脂漏性皮膚炎は、皮脂によって皮膚がかぶれる病気といえます。頭や顔など皮脂の分泌の多い部位に炎症を引き起こし、赤みやかゆみ、フケなどの症状を起こします。皮脂の多い思春期以降の男性に特によく見られますが、女性にも起こります。一般的には長く続く病気で、症状を抑える塗り薬と再発を予防する塗り薬を適宜使いながら、根気強く付き合っていく必要があります。なお、乳児期にも多いのですが、これは生まれる前にお母さんから受け取ったホルモンの影響で脂腺が過剰に活発に働きやすいためで、基本的には数ヶ月で自然と落ち着いていきます(乳児脂漏性皮膚炎)。

症状

  • 皮膚の赤みやかゆみ、鱗屑(皮膚の剥がれ)・フケ(頭の場合)、時に脂っぽい感じ。
  • 症状が出る部位は主に、皮脂の分泌が多い、頭皮や顔、胸、背中です。顔では、特に生え際や眉間、鼻や耳の周り、頬の内側(鼻唇溝)に出やすいです。
  • 症状は季節や生活状況(疲労や偏食、ストレス等)によって悪化することがあります。

脂漏性皮膚炎の正確な原因はいまだ不明ですが、以下の要因が関与しうると考えられています。

  1. 皮脂分泌の増加: 症状が出るのは、基本的に皮脂腺が活発な部位です。
  2. マラセチア菌の関与: 皮脂を好むマラセチア菌を抑えることで再発しにくくなることがあります。マラセチア菌は常在菌といって症状がない場合でも皮膚・毛穴にいる菌ですが、過剰に増えると皮膚トラブルを起こしやすいです。
  3. 紫外線の関与: 皮脂が紫外線によって変化することで、皮膚に炎症を起こしやすくなる可能性があります。
  4. 遺伝的要因: 皮脂の多い体質の遺伝なのか、家族に脂漏性皮膚炎などの方がいる場合、発症しやすいです。
  5. 環境要因: ストレス、気候の変化、過剰な皮膚ケアなどが悪化因子となります。

診断

脂漏性皮膚炎の診断は、主に見た目(皮膚の状態と症状のある部位)で判断されます。症状の経過も重要です。他の病気と区別が難しい場合には、血液検査やパッチテスト(かぶれの検査)、皮膚生検(皮膚の一部を切り取って顕微鏡で確認する検査)などを行うこともあります。

症状が似ることのある病気には、尋常性乾癬、接触皮膚炎(かぶれ)、アトピー性皮膚炎やその他の湿疹、酒さ、膠原病(皮膚筋炎やエリテマトーデス)などがあります。

治療

  1. ステロイドの塗り薬:
    • 炎症を抑えるための薬で、赤みやかゆみ、フケなど症状が目立つ時期に使用します。お薬の強さや、軟膏、クリーム、ローション、シャンプーなどのタイプで様々な種類に分かれており、部位や症状、使用感などを考慮して選択します。長期間使用すると以下のような副作用が出やすくなるため、基本的には短期間使用します。
    • 副作用: ニキビ(ステロイドざ瘡)、血管拡張(ステロイド酒さ)、皮膚が薄くなる(皮膚萎縮)など
  2. 抗真菌薬の塗り薬:
    • 症状を繰り返す場合など、マラセチア菌の関与が疑われる場合に、抗真菌薬のクリームやローションを使用します。抗菌効果は多少劣る可能性がありますが、市販のシャンプーなどもあります。
    • 副作用: かぶれや局所刺激感、乾燥など(頻度はあまり多くありません)
  3. 自然治癒
    • 特に乳児脂漏性皮膚炎の場合には、生後数ヶ月で自然と落ち着くことが多いです。それまでは、スキンケアを丁寧に行っていただくことが悪化予防として重要です。症状が強い場合には弱いステロイドの塗り薬を短期間使用することもあります。
  4. 生活習慣の改善:
    • 適切なスキンケアやバランスのよい食事、十分な睡眠、ストレス管理なども重要です。

日常生活上の注意点

脂漏性皮膚炎の症状を和らげ、再発を防ぐためには、以下の点に注意しましょう

  • 洗浄: 泡立てたシャンプーや洗顔などで優しく洗い、皮脂の過剰分泌を抑えます。(通常、シャンプーは1日1回、洗顔は1日2回程度が適切です。)
  • 保湿: 肌の乾燥を防ぐために保湿します。
  • 紫外線ケア: 皮脂が紫外線で変化すると炎症を起こしやすくなるとも言われています。そのため、日焼け止めの使用などもお勧めします。
  • 刺激の少ない製品の使用: シャンプーや洗顔料はなるべく刺激の少ないものを。症状にもよりますが、お化粧も刺激の少ないものであれば大丈夫です。強い洗浄剤やアルコールを含むものは、なるべく避けてください。
  • 規則正しい生活: 睡眠不足やストレスが悪化因子となるため、十分な休息を取りましょう。
  • バランスの良い食事: 偏った食生活も悪化因子となりうるため、バランスの良い食事を意識してください。
  • 医師への相談: 症状が悪化した場合は、早めにご相談ください。

脂漏性皮膚炎は適切な治療と日常生活での注意により、症状のコントロールが可能です。お悩みの方は、ぜひ皮膚科にご相談ください。

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