肝斑は、顔の左右対称に広がる淡い褐色の色素斑です。紫外線や摩擦、ホルモン変動で悪化しやすく、再発しやすいのが特徴です。
目次
肝斑とは
肝斑は、顔の左右対称に広がる淡い褐色の色素斑で、特に両頬に出やすいのが特徴です。額や口周りに出ることもあります。境界は一般的に不明瞭で、季節によって濃淡が変わることもあります。紫外線や摩擦などの刺激、ホルモン変化によって悪化することが多く、再発しやすい色素斑です。
発生機序(なぜできるのか)
肝斑がなぜできるのかはまだ詳しくはわかっていませんが、表皮基底層にあるメラノサイト(メラニンを作る細胞)が過剰にメラニンを産生することでできると考えられています。背景には次のような要因が複合的に関与します。
- 紫外線・可視光線:メラノサイトを直接刺激し、メラニン生成を促進。
- ホルモン変動:エストロゲンやプロゲステロンがメラノサイトを敏感にする。
- 物理的刺激:洗顔やマッサージ、スキンケア時の摩擦がメラノサイトを刺激。
- 炎症性サイトカイン:炎症時に体内で増える物質(炎症性サイトカイン)がメラノサイトを刺激。
これらが絡み合うことで、一度発症すると慢性化・再燃を繰り返しやすくなります。
好発年齢・好発部位
- 年齢:30〜50代女性に多い。妊娠・出産、更年期前後で増加。
- 部位:両頬、額、上口唇(口ひげ様)、あご、こめかみ。
- 男女差:男性にも起こるが稀。強い紫外線曝露やホルモン異常が背景のことも。
悪化因子
- 紫外線・可視光線
- 洗顔やタオルによる摩擦
- 妊娠・経口避妊薬・閉経期などのホルモン変動
- 肌荒れやニキビなどの炎症
- 睡眠不足やストレス
肝斑の治療法
基本ケア
- VC-PMG(高浸透型ビタミンC誘導体)ローション(当院採用:〇)
ビタミンCにリン酸マグネシウムを結合させた安定型誘導体で、肌に吸収されると活性型ビタミンCに変換されます。
抗酸化作用により紫外線や可視光線で発生する活性酸素を除去し、メラニン生成の抑制やコラーゲン合成促進による肌のハリの改善が期待できます。
刺激が少なく、敏感肌の方や長期使用にも適しています。肝斑の再発予防や色調の均一化に有効です。 - トラネキサム酸ローション(当院採用:〇)
アミノ酸の一種であるトラネキサム酸を外用化した製剤です。内服と同様に、メラノサイト活性化の原因となるプラスミンの働きを抑え、炎症反応をブロックします。
肝斑や炎症後色素沈着の悪化を防ぎ、既存の色素沈着を徐々に薄くします。
外用は全身への影響が少なく、安全性が高いため、長期的なメンテナンスとしても使用可能です。内服との併用で効果の相乗も期待できます。
遮光(UV/可視光対策)
(当院採用:〇:UVプロテクトミルク等)
SPF・PAに加え酸化鉄入り日焼け止めを推奨。毎日の塗り直しが必須です。
外用・ローション
薬物療法
- トラネキサム酸内服(当院採用:〇)
アミノ酸の一種で、メラノサイトを活性化させる「プラスミン」の働きを抑え、メラニン生成の元になる炎症反応をブロックします。
比較的安全性が高い薬ですが、まれに血栓症(深部静脈血栓症・肺塞栓症)などの副作用が報告されているため、血栓症の既往やリスクが高い方には処方できません。
また、ホルモン系疾患や重度の腎障害がある場合も使用を避けます。 - ハイドロキノン+トレチノイン併用療法(当院採用:適応あれば処方可)
ハイドロキノンはメラニン生成を阻害する美白成分で、既にできた色素沈着の改善にも有効です。
トレチノインはビタミンA誘導体で、肌のターンオーバーを促進し、メラニンを含む古い角質を排出します。
これらを併用することで、新しいメラニンの発生を抑えつつ、既存の色素を効率的に薄くする相乗効果が得られます。
ただし、刺激性が比較的強く、赤みや皮むけ、ヒリつきが出るため、短期間の集中治療として医師の指導のもとで行います。
肝斑の場合は刺激による悪化を避けるため、症状が安定している時期や他の治療で肌が落ち着いている段階で導入することがあります。
内服
外用
施術(刺激を抑えて慎重に)
ピーリング
- マッサージピール(コウジ酸配合)(当院採用:〇)
「PRX-T33」とも呼ばれるピーリングで、TCA(トリクロロ酢酸)と低濃度過酸化水素、そして美白作用のあるコウジ酸を配合しています。
TCAが真皮層に作用してコラーゲン生成を促進し、肌のハリ・弾力を高めます。コウジ酸はメラニン生成を抑え、肝斑や色素沈着の改善をサポートします。
ダウンタイムが少なく、施術直後からハリ感・ツヤ感を実感しやすいのが特徴です。
ただし肝斑は、摩擦刺激が悪化原因になることがあるので、肝斑のある箇所に対しては十分に注意して施術する必要があります。 - エレクトロポレーション(ケアシス TAプラス等)(当院採用:〇)
微弱な電気パルスを利用して、通常は皮膚バリアを通過しにくい有効成分を肌の奥(真皮層)まで浸透させる治療です。針を使わないため痛みがほとんどなく、保湿・美白・鎮静効果を同時に得られます。TAプラスの主な特徴:
- 美白効果:トラネキサム酸がメラニン生成を抑制し、肝斑やシミ・くすみを改善。
- 保湿効果:ヒアルロン酸が肌に潤いを与え、乾燥を防ぎます。
- 抗炎症効果:グリチルリチン酸ジカリウムが肌荒れや炎症を抑え、健やかな肌状態を保ちます。
- 導入効果:ケアシスなどの導入機器により、有効成分を肌の奥深くまで届けます。
肝斑では、色素沈着の悪化を防ぎながら維持療法として継続することで、再発予防や色調改善の相乗効果が期待できます。
さらに、VC-PMGローションをご購入いただいた場合は、同時にVC-PMGのエレクトロポレーション導入も可能です。 -
レーザートーニング(Qスイッチレーザートーニング)
肝斑治療において従来の高出力レーザーでは悪化の恐れがあったため、低出力で刺激を抑えたレーザー治療として登場しました。
「QスイッチYAGレーザー」(波長1064nm)などの機器を用い、弱いパワーで皮膚全体に均一照射し、メラニン色素を少しずつ破壊していきます。
複数回の治療を重ねることで、肝斑や色素沈着を徐々に改善します。
ただし、照射による刺激でリバウンドや炎症後色素沈着(PIH)が起こる場合があるため、国内ガイドラインでは「保存療法を行って十分効果の得られない場合に併用療法として行うことを弱く推奨」とされています。 -
ピコトーニング(ピコレーザートーニング)
レーザートーニングの一種ですが、次世代型として登場した治療法で、ピコ秒(1兆分の1秒)レベルの極めて短いパルス幅を持つレーザーを使用します。従来よりも肌への熱ダメージがさらに少なく、より高い効果が期待できるとされています。少ない回数での改善例も報告されていますが、同様に肝斑の反応性や状態によってはリスク管理が必要です。 -
まとめ(技術の進化の流れ)
従来の高出力レーザー(肝斑は悪化しやすく非推奨)
→ レーザートーニング(低出力・均一照射・リスク軽減)
→ ピコトーニング(超短パルス・さらに低刺激・効果向上)
という順に進化してきました。 -
当院採用のルメッカは肝斑には推奨されておりません
IPLはシミやそばかすなどに効果的な光治療ですが、肝斑には強い光刺激が悪化の引き金になることがあり、肝斑部分への使用は推奨されません。
当院でも肝斑を目的としてルメッカを使用することはありません。
エレクトロポレーション