セマグルチドは、注射製剤と経口製剤の両方が利用可能で、注射製剤は週1回の投与で効果を発揮しますが、経口製剤「リベルサス (Rybelsus)」は毎日服用する必要があります。この違いは、薬剤の吸収や作用時間における科学的な特性によるものです。本記事では、その理由を詳しく解説します。
1. 経口製剤の特徴
経口セマグルチドは、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬の中で唯一の経口剤です。通常、ペプチド系薬剤は胃腸内で分解されてしまい、経口摂取では吸収されにくいという課題がありますが、セマグルチドは以下の技術によりこの課題を克服しています。
2. 吸収補助技術(SNAC)
経口セマグルチドには、**SNAC(Sodium N-(8-[2-hydroxybenzoyl]amino)caprylate)**という吸収補助剤が含まれています。この補助剤の役割は以下の通りです:
- 胃酸から薬剤を保護: SNACはセマグルチドの分解を防ぎ、胃腸内での安定性を高めます。
- 胃粘膜からの吸収を促進: セマグルチドを効率的に血中に吸収させる役割を果たします。
ただし、SNACの効果は短時間しか持続しないため、一度の服用で長期間の効果を得ることは難しいのです。
3. 半減期と血中濃度の維持
- 注射製剤の場合
注射製剤(オゼンピック、ウィゴービ)は、分子の化学修飾によって分解耐性が高まり、体内での半減期が1週間程度と長いです。そのため、週1回の投与で血中濃度を安定させることができます。 - 経口製剤の場合
経口セマグルチドは、吸収効率が注射製剤ほど高くなく、血中濃度を維持するためには毎日服用する必要があります。一日一回の服用により、血中濃度を一定に保ち、持続的な治療効果を発揮します。
4. 空腹時に服用する理由
経口セマグルチドの吸収効率は非常に低く、適切に効果を得るためには空腹時に服用することが重要です。
- 食物との相互作用
セマグルチドは食物の存在下では吸収が大幅に低下します。そのため、服用後少なくとも30分間は水以外を摂取せず、胃が空の状態で吸収されるようにする必要があります。 - 服用のタイミング
朝起きた直後の空腹時にコップ1杯の水(約120ml)と一緒に服用することが推奨されています。この手順を守ることで、SNACが最大限に作用し、セマグルチドの吸収を助けます。
5. 毎日服用することの意義
毎日服用する理由は、以下のような患者へのメリットを考慮したものです。
- 効果の安定性
- 血糖値コントロールや体重減少効果を安定して得るためには、一定の血中濃度を維持する必要があります。
- 患者の利便性
- 注射に抵抗がある患者や、毎日服用することで治療をルーチン化したい患者に適しています。
- 少量からの調整
- 経口製剤は3mgから始め、7mg、14mgへと段階的に増量します。これにより、副作用(特に吐き気や下痢)を軽減しながら治療を進められます。
6. まとめ
経口セマグルチド「リベルサス」が毎日服用である理由は、薬剤の吸収特性や作用時間によるものです。注射製剤とは異なり、吸収補助剤SNACの助けを借りながら、短期間で血中濃度を上げる必要があるため、毎日の服用が必要です。また、空腹時に服用し、服用後30分間は飲食を避けることで、吸収効率を最大限に高めることが重要です。
引用文献
- Novo Nordisk. “Rybelsus Product Information.” https://www.novonordisk.com.
- Wilding JPH, et al. “Oral Semaglutide in Type 2 Diabetes Treatment: Efficacy and Safety.” New England Journal of Medicine, 2019.
- American Diabetes Association. “Standards of Medical Care in Diabetes—2023.” Diabetes Care, 2023.
当院でのリベルサス診療について
当院では、経口GLP-1製剤「リベルサス」を使用した肥満治療をオンライン診療で提供しています。3mgから段階的に増量し、効果を最大限引き出します。
料金例
- リベルサス3mg(30日分):¥6,800
- 診察料、配送料込
予約方法
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