日本人におけるチルゼパチドの副作用頻度:SURMOUNT-Jと国内試験から見る注意点

Created date 2026.08.24 Up date2026.08.24

チルゼパチドによる体重管理を検討するとき、効果だけでなく「どのような副作用が、どのくらいの頻度で起こるのか」を確認しておくことが大切です。

チルゼパチドはGIP/GLP-1受容体作動薬で、国内ではマンジャロ、ゼップバウンドに関連する有効成分です。体重管理の領域では、吐き気、便秘、下痢、嘔吐、食欲低下などの胃腸症状がよく確認されます。

この記事では、日本人を対象にした主な論文や国内試験をもとに、チルゼパチドの有害事象の頻度を整理します。論文では「副作用」ではなく「有害事象」として集計されることが多く、必ずしも薬剤との因果関係が確定したものだけではない点に注意が必要です。

目次

まず知っておきたい「有害事象」と「副作用」の違い

臨床試験では、薬剤との因果関係にかかわらず、治療中に起きた体調変化を「有害事象」として集計することがあります。一方、一般にいう「副作用」は、薬剤との関連が疑われる症状を指すことが多い言葉です。

そのため、論文の数字を見るときは、「その症状が薬剤で必ず起きる」という意味ではなく、「試験中にその症状が報告された頻度」として読むのが適切です。

肥満症領域:SURMOUNT-J

日本人の肥満症患者を対象にした重要な試験がSURMOUNT-Jです。これは、肥満症の日本人患者を対象に、チルゼパチド10mg、15mg、プラセボを比較した第3相試験です。

対象は日本人の肥満症患者で、2型糖尿病のある方は除外されています。体重管理外来で副作用頻度を考えるうえでは、もっとも参考にしやすい国内データのひとつです。

項目 チルゼパチド10mg チルゼパチド15mg プラセボ
何らかの有害事象 84% 86% 69%
有害事象による治療中止 1% 0% 4%

胃腸関連の有害事象はチルゼパチド群で多く、特に便秘、悪心、下痢、嘔吐、腹部不快感などが報告されています。

胃腸関連の有害事象 10mg 15mg プラセボ
胃腸関連有害事象 全体 52.1% 61.0% 28.0%
便秘 16.4% 27.3% 6.7%
悪心 13.7% 23.4% 4.0%
下痢 12.3% 9.1% 4.0%
嘔吐 6.8% 11.7% 4.0%
腹部不快感 6.8% 5.2% 0%

この結果から、チルゼパチドでは胃腸症状が比較的よくみられる一方、SURMOUNT-Jでは有害事象による治療中止は少なかったことがわかります。ただし、10mg、15mgのデータであり、低用量の使用感とは異なる可能性があります。

SURMOUNT-1 日本人サブ解析

SURMOUNT-1の日本人サブ解析では、日本人102人を対象に、チルゼパチド5mg、10mg、15mg、プラセボが比較されています。

この解析では、チルゼパチド群で体重減少が確認され、安全性について新たな懸念は認められなかったと報告されています。主な有害事象は、全体試験と同様に胃腸症状が中心でした。

サブ解析は対象人数が102人と限られるため、頻度を細かく一般化するよりも、「日本人でも海外大規模試験と大きく異なる安全性シグナルは示されなかった」と読むのが現実的です。

低用量の日本人実臨床研究

2026年には、非糖尿病の日本人成人を対象に、低用量チルゼパチド2.5mg維持と5mg維持を比較した実臨床研究も報告されています。

対象は112人で、全員が2.5mgから開始し、4週間後に2.5mgを維持する群と5mgへ増量する群に分かれました。6か月時点での有害事象は、2.5mg群で35%、5mg群で50%でした。主な内容は胃腸症状です。

項目 2.5mg群 5mg群
解析人数 58人 54人
有害事象の頻度 35% 50%
主な内容 胃腸症状が中心 胃腸症状が中心

この研究はランダム化比較試験ではなく、観察期間も6か月です。そのため限界はありますが、低用量での実臨床データとして参考になります。特に、用量が上がるほど有害事象が増える可能性を考えるうえで重要です。

糖尿病領域の日本人データ:SURPASS J-mono

マンジャロは国内では2型糖尿病治療薬として承認されています。そのため、日本人の2型糖尿病患者を対象にしたSURPASS J-mono、SURPASS J-comboも、安全性を考えるうえで参考になります。

SURPASS J-monoは、日本人2型糖尿病患者を対象に、チルゼパチド5mg、10mg、15mgとデュラグルチドを比較した試験です。主な胃腸症状として、悪心、便秘などが報告されています。

項目 5mg 10mg 15mg
悪心 12% 20% 20%
便秘 15% 18% 14%

糖尿病患者を対象にした試験であるため、肥満症の自費診療にそのまま当てはめることはできません。ただし、日本人でチルゼパチドを使用した際の胃腸症状の頻度感を知るうえでは参考になります。

糖尿病領域の日本人データ:SURPASS J-combo

SURPASS J-comboは、日本人2型糖尿病患者で、経口血糖降下薬にチルゼパチドを追加した試験です。443人がチルゼパチドを受け、全体の77%に少なくとも1つの有害事象が報告されています。

主な有害事象は以下の通りです。

主な有害事象 頻度
鼻咽頭炎 17%
悪心 17%
便秘 12%
下痢 12%
食欲低下 10%

15mg群では有害事象が84%と、5mg群、10mg群より多い傾向が報告されています。ここでも、用量や背景疾患、併用薬によって体調変化の出方が変わることが示唆されます。

どの症状に注意すればよいですか?

日本人データを総合すると、チルゼパチドで注意したい症状は胃腸症状が中心です。

  • 吐き気、悪心
  • 便秘
  • 下痢
  • 嘔吐
  • 腹部不快感、腹痛
  • 食欲低下
  • 注射部位の赤みや痛み

また、脱水、胆石、胆嚢炎、急性膵炎、低血糖症状などにも注意が必要です。強い腹痛、繰り返す嘔吐、冷汗やふるえ、意識がぼんやりする、強い脱水感などがある場合は、自己判断で継続せず医療機関へ相談してください。

副作用を減らすために大切なこと

胃腸症状は、開始初期や増量時に目立つことがあります。すべてを防げるわけではありませんが、以下のような点を意識すると、継続しやすくなる場合があります。

  • 一度に食べすぎない
  • 脂っこい食事や大量の飲酒を避ける
  • 水分をこまめに摂る
  • 便秘が続く場合は早めに相談する
  • 体調が悪いときに自己判断で増量しない
  • 強い症状がある場合は次回を待たず相談する

体重管理では、薬剤の効果だけでなく、食事量、たんぱく質摂取、筋肉量、活動量、睡眠、飲酒習慣、便通まで含めて確認することが大切です。

マンジャロとゼップバウンドの国内での位置づけ

チルゼパチドを有効成分とする薬剤には、国内ではマンジャロとゼップバウンドがあります。ただし、日本での承認内容が異なります。

薬剤名 一般名 国内での主な位置づけ
マンジャロ チルゼパチド 2型糖尿病治療薬として国内承認。肥満治療目的では適応外使用
ゼップバウンド チルゼパチド 肥満症治療薬として国内承認

当院で取り扱うマンジャロは、海外製未承認品や個人輸入品ではなく、国内一次卸から入手しています。診察時には、肥満治療目的では国内未承認であること、国内承認薬の有無、入手経路、副作用、費用について確認します。

ベルデクリニックの体重管理外来

当院では、ウゴービ、ゼップバウンド、マンジャロのご相談に対応しています。診療は健康保険を使用しない自費診療です。診察料は無料、保冷袋・保冷剤は無料、発送の場合はクール便送料1,300円です。

治療前のBMIが23未満の方、妊娠中・授乳中・妊娠希望の方、甲状腺の病気がある方、膵炎・胆石・胆嚢炎・重度の胃腸障害などがある方は、処方できない場合があります。既往歴、内服薬、体調によっても医師が不適切と判断することがあります。

オンライン診療にも対応しています。診察で適応、安全性、費用、受け取り方法、副作用時の相談方法を確認したうえで処方可否を判断します。

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