美白や色素沈着の改善に役立つ成分として知られる「L-シスチン」と「L-グルタチオン」。これらは日本でもおなじみの「ハイチオール」や「タチオン」として処方薬やサプリメントとして利用されています。 最近の研究では、この2つの成分を組み合わせることで、肌の明るさを向上させ、色素沈着を効果的に改善する可能性が示されました。
このコラムでは、その研究の詳細をご紹介し、L-シスチンとL-グルタチオンの実際の効果を科学的エビデンスと共に解説します。
研究の詳細
今回取り上げた研究の詳細です:
- 論文タイトル: The effects of the oral supplementation of L-Cystine associated with reduced L-Glutathione-GSH on human skin pigmentation: a randomized, double-blinded, benchmark- and placebo-controlled clinical trial
- 雑誌名: Journal of Cosmetic Dermatology
- 出版年: 2022年2月
- DOI: 10.1111/jocd.14137
- 著者: Joël Duperray, Renaud Sergheraert, Kunyanatt Chalothorn, Preeyanuch Tachalerdmanee, Fabrice Perin
この論文は、ランダム化二重盲検プラセボ対照試験という信頼性の高い研究デザインで実施され、Journal of Cosmetic Dermatologyに掲載されています。
研究の目的
この研究は、L-シスチン(500mg)とL-グルタチオン(250mg)を組み合わせた経口サプリメントが、肌の明るさ(美白効果)や色素沈着(ダークスポット)の改善にどのように寄与するかを明らかにすることを目的としています。
研究デザイン
研究は、以下のような手順で進められました:
- 対象者:アジア人女性124名
- 期間:12週間
- グループ分け:
- プラセボ群
- L-グルタチオンのみ摂取
- L-シスチンのみ摂取
- L-シスチン+L-グルタチオン摂取
全ての被験者はランダムに4つのグループに分けられ、1日1回、決められたサプリメントまたはプラセボを摂取しました。試験は二重盲検法で行われ、被験者も研究者もどのグループに属するかを知らない状態で進行しました。
美白と色素沈着の評価方法
肌の明るさ(美白効果)
- *CIE Lab カラーシステム**を使用。
- **L値(明るさ)**が高いほど、肌が明るい(美白)と評価。
- 標準化された照明条件下で測定し、治療前後のL値の変化を記録。
色素沈着(ダークスポット)
- デジタル画像解析で、色素沈着の「面積」と「色濃度」を測定。
- 色素沈着の総面積と濃さが治療前後でどの程度改善したかを数値化。
研究結果
12週間の研究期間で、以下のような効果が確認されました:
肌の明るさ(美白効果)
- L-シスチン+L-グルタチオン群では、12週間後に肌の明るさを示すL値が8.7%向上。
- プラセボ群や単剤群と比較して、最も顕著な改善が見られました。
色素沈着(ダークスポット)
- 色素沈着の面積が12週間で34.4%減少。
- 6週間の時点でも16.2%減少しており、早期から効果が現れることが確認されました。
安全性
- 研究期間中、重大な副作用や有害事象は報告されず、安全性が確認されました。
メカニズム:なぜ効くのか?
- メラニン生成の抑制
- L-グルタチオンがメラニン生成経路を「暗色メラニン(ユーメラニン)」から「淡色メラニン(フェオメラニン)」へシフトさせ、美白をサポート。
- 抗酸化作用
- グルタチオンとL-シスチンが抗酸化物質として酸化ストレスを軽減し、肌ダメージを抑制。
- 相乗効果
- L-シスチンはグルタチオン合成を促進し、2つの成分を組み合わせることでより効果的な作用を発揮。
この研究の意義
この研究は、L-シスチン(ハイチオール)とL-グルタチオン(タチオン)の併用が、色素沈着の改善や美白効果に寄与する科学的エビデンスを提供しました。特にアジア人女性を対象としており、肌特性に合った成分として信頼性が高い結果といえます。
まとめ:ハイチオールとタチオンで内側から美肌を
今回の研究結果から、「L-シスチン」と「L-グルタチオン」を組み合わせたサプリメントは、肌の明るさを向上させ、色素沈着を改善する有効な手段であることが示唆されました。これらの成分は、ハイチオールやタチオンとして医療用医薬品やサプリメントで利用でき、美肌を目指す方に新しい選択肢を提供します。
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