セマグルチド(Semaglutide)は、GLP-1受容体作動薬の中で最も注目される薬剤の一つです。その開発の背景、適応拡大、そして種類について詳しく解説します。
セマグルチドの歴史
- GLP-1受容体作動薬の基盤
- GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、食事摂取後に腸管から分泌されるホルモンで、血糖値調節や食欲抑制に重要な役割を果たします。しかし、GLP-1は体内で短時間しか作用しないため、治療薬として用いるには改良が必要でした。
- これに基づき、GLP-1受容体作動薬の開発が進み、セマグルチドがその代表例として登場しました。
- セマグルチドの承認と普及
- 2017年: セマグルチドは最初に2型糖尿病治療薬「オゼンピック (Ozempic)」として、アメリカ食品医薬品局(FDA)に承認されました。この薬剤は週1回の注射で効果を発揮し、血糖値管理に優れた成績を示しました。
- 2021年: セマグルチドは肥満治療薬「ウィゴービ (Wegovy)」としてFDAに承認されました。この適応拡大により、体重管理におけるセマグルチドの有効性が証明されました。
- 経口製剤の登場
- 2019年: 経口セマグルチド「リベルサス (Rybelsus)」がFDAに承認されました。これは世界初の経口GLP-1受容体作動薬で、注射が苦手な患者に新たな選択肢を提供しました。
セマグルチドの種類
セマグルチドは、適応や投与方法に応じて3つの製剤に分かれています。それぞれの特徴を以下にまとめます。
- オゼンピック (Ozempic)
- 特徴:
- 週1回の皮下注射。
- 血糖値改善に加え、体重減少効果も確認されています。
- 容量:
- 0.25mg、0.5mg、1.0mg、2.0mg(徐々に増量)。
- 特徴:
- ウィゴービ (Wegovy)
- 特徴:
- 週1回の皮下注射。
- 高用量(最大2.4mg)で体重減少効果が顕著。
- 食欲抑制と摂取カロリーの大幅な減少を促します。
- 容量:
- 0.25mgから開始し、最大2.4mgまで増量。
- 特徴:
- リベルサス (Rybelsus)
- 特徴:
- 経口投与が可能なセマグルチド。
- 毎日服用するタブレット型で、注射が苦手な患者にも適応できます。
- 容量:
- 3mg、7mg、14mg(徐々に増量)。
- 特徴:
セマグルチドの意義と今後
セマグルチドは、糖尿病治療だけでなく、肥満治療にも適応が広がり、患者の生活の質を向上させる薬剤として高い評価を得ています。その種類の多様性により、患者のニーズやライフスタイルに合わせた柔軟な治療選択肢を提供しています。
引用文献
- Wilding JPH, et al. “Once-Weekly Semaglutide in Adults with Overweight or Obesity.” New England Journal of Medicine, 2021.
- Novo Nordisk. “Rybelsus and Ozempic Product Information.” https://www.novonordisk.com.
- American Diabetes Association. “Standards of Medical Care in Diabetes—2023.” Diabetes Care, 2023.