じんましん(以下、蕁麻疹)は、非常に頻度が高く、多くの人が一度は経験すると言われる皮膚の病気です。皮膚の一部が急に赤く盛り上がって、同時に強いかゆみを起こし、数時間程度で跡かたなく消えてしまうのが典型的です。繰り返すことも多く、目に見えるところだと見た目の影響が大きいですし、強いかゆみがあれば集中力が削がれ、生活の質を大きく損なうことがあります。しかし、適切な診断と治療を行うことで、早くに症状を抑え、その状態をキープできれば快適な生活を取り戻すことが可能です。
Verde Clinic お茶の水では、蕁麻疹を専門とする皮膚科があり、オンライン診療も可能です。御茶ノ水駅から徒歩3分のアクセスの良さで、忙しい方でも通いやすい環境です。お悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
蕁麻疹の概要
蕁麻疹は、急に赤い発疹とかゆみが出現し、24時間以内に消えることが特徴です。短期間症状が出てそれっきりのこともあれば、長く続くこともあります。特に6週間を境に、発症から6週間までの急性蕁麻疹、6週間以上続いている慢性蕁麻疹の2つに大別されます。慢性蕁麻疹は、薬を切らすとかゆみ・発疹が出る状態が月単位・年単位で続きやすく、皮膚科に長く通われる方が多い病気の1つでもあります。
蕁麻疹の症状
概要の項と重複しますが、蕁麻疹の主な症状は以下の通りです:
・発疹:ミミズ腫れや蚊に刺されたように、赤く盛り上がった発疹ができます。
・かゆみ:発疹とともに強いかゆみを感じます。
・24時間以内に消える:上記のような発疹、かゆみが24時間以内に消えるのが特徴的です。ただし、複数、広い範囲に出現することもあり、その場合は出たり、消えたりを繰り返すことで全体としては24時間以上続くこともあります。
上記に加えて、次のような症状を伴う時には注意が必要です。
・息苦しさ、腹痛・下痢、意識が遠のくなど:アナフィラキシー(ショック)の可能性に注意が必要です。特に蜂に刺された後や食事や薬の内服・注射後すぐに蕁麻疹が出た場合には、このような症状が出てこないかに注意して、もし出てくる場合にはすぐに医療機関を受診するようにしてください(急に悪化している場合は救急車を呼んでください)。なお、アナフィラキシー用の自己注射薬を処方されている場合は、特別に使用の条件を定められているのでなければ、ためらわずにご使用下さい。
・発熱:急な発熱とともに、または数日遅れで蕁麻疹が出た場合は、感染症に伴った蕁麻疹の可能性があります。また、原因不明の発熱とともに蕁麻疹を繰り返している場合は、非常にまれですが免疫(炎症)の病気の可能性なども考えるため、皮膚科を受診してその旨をお伝えください。
蕁麻疹の原因
・アレルギー(アレルギー性蕁麻疹)
蕁麻疹の原因はアレルギー反応と思われている方が少なからずおられますが、その割合は蕁麻疹全体の5%程度といわれています。
・圧迫や熱さ、冷たさなどの物理的な刺激(物理性蕁麻疹)
・発汗の刺激(コリン性蕁麻疹)
・感染症や免疫の病気など
アレルギー以外の原因としては上記があります。しかし、これらが残りの95%というわけでもありません。
・はっきりした直接的な原因は見つからない(特発性蕁麻疹)
実際のところ、蕁麻疹の大半、7-8割は調べてもはっきりした直接的な原因が見つからない特発性蕁麻疹と呼ばれるタイプと報告されています。
しかし、直接的な原因が見つからない場合でも、疲労やストレス、その他の病気の状態など、悪化の原因が隠れていることはあるため、どのようなときに症状が出たのか確認しておくことは大切です。割合は比較的少なくてもアレルギーが隠れていることは度々ありますし、患者さん自身の体験や感覚が診断の大きな手掛かりとなることもあります。気になることがあれば、些細なことでも医師に伝えるようにしてください。
そして、直接的な原因によらず、また原因がはっきりしない場合でも、蕁麻疹ができるメカニズムとしてヒスタミンという物質が関わっていることが分かっています。例えば、アレルギーの場合は、食べ物や薬などによって体の中にアレルギーの原因物質(アレルゲン)が体内に入ると、免疫反応としてヒスタミンという物質が放出されます。その際、ヒスタミンという物質が体内で放出され、皮膚の血管に作用することで血管が拡張して、そこから水分が漏れ出てしまい、皮膚が赤く腫れ上がってしまうのです。
蕁麻疹の診断
蕁麻疹の診断は、主に問診と視診によって行われます。問診では24時間以内に跡形もなく消えたということが重要なヒントになります。また、何か原因となるものが隠れていないかを見つけるためには、蕁麻疹が出る状況の確認が重要です。視診では特徴的な赤く盛り上がった発疹を確認しますが、診察時には消えてしまっている場合も多い(それが蕁麻疹らしい経過ではあるのですが)ので、蕁麻疹かな?と思った場合にはスマホ等で写真を撮っておいていただくと、診察時に参考にすることができます。なお、蕁麻疹に限らず皮膚の病気では発疹の見た目が診断に大切なので、気になる場合は写真を撮っておいていただくと、発疹の変化なども見れて診断に役立ちます。当院ではWeb事前問診を行っており、そこで写真のアップロードも可能ですので、ぜひご利用ください。
問診と視診以外では、アレルギーなど何かしらの原因の存在が疑われる場合には、採血検査や原因と疑われるものの刺激を少しずつ試すような検査を行うこともあります。
蕁麻疹の治療
蕁麻疹の治療は、原因の特定とその回避、そして適切な薬物療法による症状の管理が基本です。
原因の特定とその回避
原因を特定するためには、蕁麻疹が出た時の状況の確認が重要です。例えば、「毎回〇〇を食べた後に出る」「運動時や入浴時に出た」などです。そこで疑われた原因が本当の原因なのか調べるために検査が必要になることもあります。そして、原因が特定される場合には、基本的にはその原因を避けることが重要です。これは当たり前のことのように聞こえるかもしれませんが、一部の原因が明らかな蕁麻疹ではその刺激を繰り返すことで症状が軽くなっていくこともあるため、あくまで「基本的には」となります。例えば、発汗の刺激が原因の蕁麻疹は汗をかいているうちに、症状が軽くなっていった方の例が報告されています。ただし、このような治療は一歩間違えれば命の危険もあるアナフィラキシーに繋がってしまうこともあるため、皮膚科で正確な診断を受けて医師に相談しながら行うことが望ましいと考えられます。
薬物療法
- 抗ヒスタミン薬:
その名の通り、蕁麻疹ができるメカニズムに大きく関わるヒスタミンを抑えるお薬です。脳に働いてしまうと副作用として眠気が出てしまうため、近年では脳にあまり働かないようにした「第2世代抗ヒスタミン薬」というタイプが主に用いられています。第2世代の薬の種類や患者さんの体質などにもよりますが、眠気の副作用が比較的出やすい種類のものでは、車などの運転をする方では使えないことになっています。また、1日に1回タイプ、2回タイプ、症状が重い場合に倍量飲む使い方が想定されているもの、想定されていないものなど様々な種類があり、お値段も多少異なるため、どのようなものが希望かあれば事前問診で、または診察時の医師にお伝えください。 - H2受容体拮抗薬:
こちらもある意味抗ヒスタミン薬になりますが、蕁麻疹によく関わるH1受容体ではなく、どちらかといえば胃の活動に関わるとされるH2受容体に効く薬になります。通常の抗ヒスタミン薬だけでは抑えきれない場合に併用すると、効きが良くなることがありますが、蕁麻疹には保険適用の問題がないため、処方できる状況が限られます。 - ステロイド薬:
様々な免疫の反応を抑えるステロイドの飲み薬です。効果は高いのですが、長期使用は副作用(感染リスク、浮腫、血圧や血糖の変動、骨粗鬆症など)が問題になるため、蕁麻疹では原則短期の使用に限るべきです。
なお、蕁麻疹のかゆみに対して強く掻いてしまって湿疹ができてしまうことをたまに見ます。そのような場合に塗り薬のステロイドを処方することがあります。塗り薬に関しては、飲み薬のような副作用はほとんどありませんし、このような湿疹は比較的短期で治るため、こちらに関してはあまり心配されなくて大丈夫です。 - 生物学的製剤(オマリズマブなど):
症状が長く続く慢性蕁麻疹で、しかも抗ヒスタミン薬を適切に利用しても十分に抑えられない場合が適応となります。高価なお薬ではありますが、頑固な蕁麻疹にも効きやすいです。いずれも注射の薬で、お薬毎に決められたタイミング(大体2-4週間に1回)で使いますが、しばらく医療機関で練習して問題なければ、自宅で自身で注射するような使い方も認められています。
比較的頻度が多い副作用は、注射部位の赤みや腫れ、痛みなどがあります。また、免疫に作用するお薬のため、感染症やアレルギーのような病気など全身の副作用にも注意が必要とされます。
なお、このタイプのお薬は、全身の副作用リスク等に対応できる施設で使用するように定められているため、適応がある患者さんは原則として近隣の病院に紹介させていただく形となります。
蕁麻疹の治療は、その原因や症状の程度、そして患者さん一人ひとりのライフスタイルに合わせて最適な方法を選択することが重要です。
診療の流れ
Verde Clinic お茶の水では、患者さんに安心して治療を受けていただけるよう、丁寧な問診と診察を心がけています。通常の蕁麻疹診療の流れは以下のとおりです。
- 予約
保険診療では、デジスマというサービスで予約を承っております。初診時は当院ホームページや公式LINEからご予約いただくことが可能です。オンライン診療の利用には、スマートフォンのデジスマアプリが必要となります。それ以外にも、アプリにはスムーズに診療を受けるための機能が備わっていますので、もしよろしければインストールしてご利用下さい。
なお、アプリの通常利用に関しては、患者さんの利用料負担はありません。オンライン診療利用時には、¥300のシステム利用料を診察料と併せて頂戴しております。 - 問診
予約後に、Web事前問診票のURLをお知らせしておりますので、来院までにご回答をお願いします。初診時には、「一番気になる症状」という項目がございますので、ここで「じんましん」を選択いただきます。その後は案内に従ってご回答ください。 - 来院・受付
予約日時になりましたらご来院ください。受付にて保険証(マイナカード)を認証いたします。受付が完了しましたら、診察室よりお呼びいたします(基本的に、同じ予約枠の方の診察順は受付の順となります)。
オンライン診療の場合には、予約時間の前にアプリよりチェックインして下さい。予約時間になりましたら、デジスマアプリでビデオ通話の呼び出しをさせていただきます。
(対面診療、オンライン診療とも、状況により多少時間が前後する可能性がございます) - 診察
問診票の内容にもとづいて、診察いたします。通常は問診と視診・触診による診察ですが、まれに検査をご提案することがあります。
診察結果にもとづいて、患者さんの状況に応じた治療法と治療計画をご提案します。治療内容や予想される効果、起こりうるリスク、治療期間などについてお伝えして、治療の選択をサポートいたします。 - 会計、処方箋・診療明細等お渡し、次回予約
対面診療の場合には、診察後は受付に戻っていただき、そちらで会計と処方箋・診療明細等のお渡しを行います。
また、次回の予約もお願いします。(もちろん、後日患者様ご自身で予約いただいても大丈夫です)
オンライン診療の場合には、お薬を受け取る薬局をお知らせください。指定された薬局に処方箋をFAXいたします。なお、診察代に関してはデジスマアプリによるクレジットカード決済になります。 - 処方薬受け取り
対面診療の場合には、患者さんのご都合のよい薬局に処方箋をお持ちいただき、処方薬を受け取っていただきます。
オンライン診療の場合には、指定された薬局にお薬で処方薬を受け取っていただきます。
よくある質問
蕁麻疹のよくある質問をまとめています。
Q1.蕁麻疹はどのようにして発症しますか?
蕁麻疹は、かゆみを伴う赤く盛り上がった発疹が急にできる病気です。ヒスタミンという物質が皮膚の血管を刺激し、かゆみや腫れを引き起こします。発疹は数時間で消えることが多いですが、新たな発疹が次々と現れることもあります。
Q2.蕁麻疹の原因は特定できますか?
蕁麻疹の原因としては、アレルギー反応や圧迫や熱さ、冷たさなどの物理的な刺激、感染症や免疫の病気なども挙げられますが、全体としてははっきりした原因が見つからないことの方が多いです。といっても、原因が特定できる場合にはそれが治療法につながる場合もありますし、特に食べ物や薬などに対するアレルギーが重症化してアナフィラキシーショックを起こすと命に関わる場合もあるため、原因が隠れていないかは注意して確認する必要があります。蕁麻疹が出るタイミングに共通することはないか、ご自身でも気にするようになさってください。
Q3.蕁麻疹は遺伝しますか?
蕁麻疹自体は遺伝する病気ではありません。ただし、アレルギー体質やまれな免疫(炎症)の病気などは遺伝することがあります。そのため、家族にアレルギー体質や免疫(炎症)の病気の方がいる場合、蕁麻疹を発症するリスクが高くなる可能性があります。
Q4.蕁麻疹が出たときにお風呂に入ってもいいですか?
蕁麻疹の症状があるときは、体温上昇によって症状が悪化することがあります。入浴は控えるか、ぬるめのお湯で短時間にすることをおすすめします。また、入浴後には肌を冷やすと症状の緩和につながることがあります。
Q5.蕁麻疹の治療法にはどのようなものがありますか?
基本的な治療法として抗ヒスタミン薬という飲み薬があります。蕁麻疹に深くかかわるヒスタミンという物質を抑える薬で、多くの方ではこの薬のみで症状を抑えることができます。通常量で十分に抑えられない場合には、まず量を増やすことや別の抗ヒスタミン薬に変更することを検討します。それでも、効果不十分な場合には、他のタイプの薬剤を併用することもあります。治療は個々の症状に応じて調整されます。
参考文献
秀 道広ほか: 蕁麻疹診療ガイドライン 2018, 日本皮膚科学会雑誌. 2018; 128(12): 2503-2624.